モールス 原題:LET ME IN
製作2010年 アメリカ 監督:マット・リーブス
原作:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
脚本:マット・リーブス
出演:コディ・スミット=マクフィー、クロエ・グレース・モレッツ
スウェーデン映画『ぼくのエリ』のリメイクです。
せっかくなので、買っていたけど読んでいなかった原作を読了してから鑑賞しました。
(あらすじ)
1980年代のニューメキシコ州ロスアラモスの雪深い小さな町に
いじめられっ子のオーウェンが母と二人で団地に暮らしていた。
ある雪の夜オーウェンの隣の部屋に不思議な少女アビーが引っ越してくる。
雪の中を裸足で歩くアビーに「友達になれない」と突然言われ
とまどうオーウェンであったが・・・・・。
原作本はスウェーデンが舞台で名前はエリとオスカルでしたが
本作はアメリカが舞台となり名前もアビーとオーウェンに変わりました。
だから原作を読んでいたけれど、原作と本作とはあまり結びつきませんでした。
(でも本のタイトルは「モールス」なんですよね。ややこしい・・・・・。)
原作はエリとオスカルだけでなく、
ホーカン(エリと一緒にいた男性)やヴィルギニア(エリに襲われた女性)、
トンミ(オスカルと同じ団地に住む男の子)のお話も詳しく述べられていて
実は私はオスカルの話よりもそちらの方がひきつけられたんです。
なので、エリとオスカルだけに焦点をしぼったこの映画では
物足りなさを感じてしまいました。
『ぼくのエリ』で感じた生きる事の残酷さや生々しさが
美しい登場人物を使う事によって薄まったような気もしました。
(ついでにヴィルギニアは原作では50歳過ぎのおばちゃんでしたが
本作ではキレイ目の大人の女性に変わっていました。
私はヴィルギニアのエピソードはホント考えさせられたのですが
本作ではアッサリと終わってしまったので、この映画の評価が下がりました。)
この映画では冒頭、病院の受付の女性がテレビを観ているのですが
ロナルド・レーガンの「悪の帝国」の演説なのです。
「悪はアメリカの外にいる(悪=この時代のソ連って事)」という演説らしいです。
私は決まった時間に開店するスーパー・・・「開くの定刻」という小話しか知らなかったので
この映画を観ても正直ピンとこなかったのですが、
後から考えてみたら
自分たちは善なる存在で悪は自分の外にあると思っているかもしれないけれど
実際はどうなんだい?ってアメリカ人に対するメッセージなのかなぁと思いました。
オスカル・・・・この映画ではオーウェンですね。
うまく説明できないんですが、この子も悪いところあるんですよ。
だからっていじめられていいわけではないんですけど。
だから原作を読んでいてもあまり好きになれなかったんです。
一応少年の成長物語として高評価のようなのですが
やられたらやりかえすというのは果たして成長の証となるのでしょうか?
私は相手のレベルに自分が落ちるだけで、決して成長したとは思えません。
この映画には大きな意味での善とか悪とか壮大なテーマがあると思うのですが
原作を読まずにパッとこの映画を観ただけでは
ここまで深く思える人っていないような気がしました。
(アメリカの人たちはスッと思えるのかもしれませんが。)
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やはり原作を読まないとわからない事が多いみたいですね。
あと、少年の成長物語として評価されているのも知りませんでした。
なんというか、”男”として大切な人を守れる強さを欲するのは、思春期として普通のことだと思いましたが、結果的には成長過程で大きく道を踏み外した感じですよね。
イラストはアビーが壁越しにモールス信号を聞き取ってるところでしょうか?
どこか強かさを感じさせる瞳がきれいです!
>アメリカ人のアメリカ人によるアメリカ人のためのリメイク
その通り!!!
私的には一番前に「字幕を読みたくない、おバカな」を付けます(笑)。
>『ぼくのエリ』で感じた生きる事の残酷さや生々しさが
>美しい登場人物を使う事によって薄まったような気もしました。
そうそう、そういうことだったのだと思います!
原作は読んでいないのであくまでも映画同士の事ですが、
何かちょっと薄めた感じだったけど、マミイさんの的確なお言葉でハッとしました☆
>(アメリカの人たちはスッと思えるのかもしれませんが。)
字幕さえ読めない奴らが・・・ホホホ・・・ご冗談でしょう〜???
.
>あの作品って善と悪がテーマだったんですか…ぜんぜん気付きませんでした。
映画だけでは私も思わなかったんですが(^^;
観終わった後でレーガンの事とか調べてたら、ふと思いました。
原作は善と悪よりは
生きるためには他人を犠牲にしても仕方ないか、と問われたような気がしました。
>あと、少年の成長物語として評価されているのも知りませんでした。
本の訳者あとがきで
「衝撃的で(非常に残酷な)スリラーと、
少年の成長の物語を組み合わせた著者の手法には
新たなスティーブン・キング誕生の兆しが感じられる」とタイムズの書評に書かれたそうです。
>結果的には成長過程で大きく道を踏み外した感じですよね。
ですよね。
この先も中二病をこじらせてるような気がします。
>イラストはアビーが壁越しにモールス信号を聞き取ってるところでしょうか?
>どこか強かさを感じさせる瞳がきれいです!
ありがとうございます!
すでにオーウェンを思い浮かべられなくなっています(^^;
クロエちゃんの映画って印象になってしまいそうです。
>私的には一番前に「字幕を読みたくない、おバカな」を付けます(笑)。
あはは。さすがmiriさん、手厳しいですね。笑
>原作は読んでいないのであくまでも映画同士の事ですが、
>何かちょっと薄めた感じだったけど、マミイさんの的確なお言葉でハッとしました☆
スウェーデン映画はかなり原作通りだったのですが
(少なくともヴィルギニアのエピソードは正確に描かれていた記憶があります)
この映画は単純にメインの二人に焦点を絞っちゃったんですよね。
色々な人との複雑な絡みが原作本ではとてもひきつけられたのですが
焦点をしぼったがために
(・・・おバカさんだから???笑)
周りがぼやけて何も見えなくなってしまったんです。
原作本が単純に若い二人だけのお話だったら
私は読んでないと思います(^^;
>字幕さえ読めない奴らが・・・ホホホ・・・ご冗談でしょう〜???
あはは!
レーガンの演説なんかは歴史の授業なんかで習ってるのかなぁ?と
単純に思ってしまいました。
僕は「モールス」を先に観たんですけど(それも映画館で)、いろいろなシーンが浮かぶのはDVDで後から観た「僕のエリ」ばかり。(笑)
「モールス」で思い浮かぶのはオレンジ系の色調とクロエちゃんだけ。
これってクロエちゃんの為の映画だったのかな。
(CGなんか使わなくたっていいのに、それより夜の凍てつく寒さを感じさせて欲しかった)
宵乃さんも書いていたけど、僕もヴァンパイア風味入りの「小さな恋のメロディ」という印象を持ちました。
原作>読もうと思ったのですが、「いじめ」のシーンが執拗に書かれてると読んだので止めました。
(中学、高校といじめられる側だったので、そういうシーンは余り観たくないし、読みたくなかった)
ホーカンも、かなりグロい人間らしいですね。
「モールス」>「僕のエリ」を観る切っ掛けになれば、それなりの意味はあるのかも。
(酷いリメイクではないと思います)
>CGなんか使わなくたっていいのに、それより夜の凍てつく寒さを感じさせて欲しかった
これは同感です!
「モールス」からは寒さが伝わってこなかったんですよね。
(アメリカとスウェーデンの違い?
どちらも行ったことがないからわからないですけど(^^;)
>宵乃さんも書いていたけど、僕もヴァンパイア風味入りの「小さな恋のメロディ」という印象を持ちました。
原作もエリとオスカルの話はそんな感じでした。
そのパートは私はあんまり好きじゃないんですけど。
>中学、高校といじめられる側だったので、そういうシーンは余り観たくないし、読みたくなかった
つらい経験をされているのですね。
いじめに関しては映画とほぼ同じような感じでした。
私もいじめられる側でしたので、その部分はザッと流し読みしちゃいました。
映像でないから自分でフィルターをかけられるような気もしますし
ご自身の体験を思い起こしてしまうかもしれない危険もありますよね。
原作本では映画版の「モールス」で描かれなかった部分に
圧倒されてひきこまれちゃいました。
>ホーカンも、かなりグロい人間らしいですね。
ホーカンに関しては、変態の中にも仁義あり、な人間で(^^;
私は結構同情しちゃいました。
痛いぐらいにエリ一筋で
モンスターの悲哀を感じました。
>酷いリメイクではないと思います
そこまでひどくはないんですけど、やっぱり物足りないです。
入門編としてはちょうどいいかもしれませんね。