トリコロール 赤の愛 原題:TROIS COULEURS: ROUGE
製作1994年 フランス・ポーランド・スイス
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
脚本:クシシュトフ・ピエシェビッチ、
クシシュトフ・キェシロフスキ
出演:イレーヌ・ジャコブ、
ジャン=ルイ・トランティニャン
トリコロール3部作の最終章です。
博愛、友愛がテーマらしいですが、
テーマなど考えずに見てほしいです。
(あらすじ)
ジュネーブ大学の学生でモデルをしているバランティーヌは
ある日犬を轢いてしまい飼い主である元判事と出会う。
この初老の男は近隣を盗聴しており、バランティーヌは
卑劣な行為だと批判するが・・・・・。
まあ、とにかくイレーヌ・ジャコブの美しい事!!!
場面場面を切り取って、飾っておきたいくらいでした。
美しき女学生と怪しげな初老の男、
恋愛関係に至らないのもよかったです。
色んな話が混ざり合い、
混ざり合うのに接点がなかったり
(ただの隣り合わせでお互いが意識していなかったり)
とても不思議な感覚に包まれました。
前2作では触れませんでしたが裁判所でニアミスしてたり、
瓶を捨てようとする同じ(?)老女が出てきたりと案外
世の中は小さな世界でつながっているのかもしれません。
(これをスモールワールド現象と言いますが、
「白の愛」に出ていたジュリー・デルピーが
監督・脚本・出演と一人何役もした
『パリ、恋人たちの2日間』にこの現象を
話し合ってる男女が出ているのも不思議な偶然ですね。)
老判事の言動が思わせぶりでもあり、
不思議な存在だったのですが
人生では何事も白黒はっきりつけられるわけではない、
説明できない事はいっくらでもありますよね。
とても不思議な存在だけど素直に受け入れる事ができました。
あえて説明しなかったのがとてもよかったと思います。
(他の方の感想も読みましたが、ほとんどの人が
「偶然」という言葉で片付けていてビックリしました。)
青、白、赤どれがいいとかじゃなくって
全部ひっくるめて一つの作品だと思いました。
もちろん、一つ一つ独立した別のお話なのだけど
私には上手く説明できない、言葉にできない部分は
全てを観てそれぞれで感じ取ってほしいと思います。
本作でのイレーヌの美しさは、恐ろしいほどですね。
十年くらい前かな、キェシロフスキ特集のため来日するはずだったんですが、
急用で来れなくなったので、挨拶代りのビデオレターを見たことがあります。
おフランスのスターなのに、泣きそうな顔で何度も謝っていて、
この映画の役柄そのままの、誠実な人なんだなと思いました。
秘蔵っ子を美しく撮るため、持てる技術の全てを出す監督と、
巨匠に身も心も委ねている女優の関係が、なんだかジンときます。
この三部作自体、各作品の関係があるような無いような、
深いような、そうでもないような、他に例のない作品ですよね。
今見てもおもしろいし、もっとファンが増えてほしいです。
本当にうっとりするくらいキレイでした。
>秘蔵っ子を美しく撮るため、持てる技術の全てを出す監督と、
>巨匠に身も心も委ねている女優の関係
お互いに信頼して関係が築けてないと
ここまでは撮れないような気がします。
映画専門チャンネルでは何度か放送されていたのですが
なんとなくスルーしていました。
もったいない事をしてました。
なかなか言葉にしにくい作品ですよね。
私が思いつく賛辞の言葉では良さを言い表せません。